230813

文化村のファミマの渡ったところの坂の下で真昼間に瞳孔が開いた男女がずっと立って見つめあって笑っているのを見てから渋谷も渋谷的な喧騒も全てが無理になりもう少なくとも今年の夏中は渋谷には行けなさそう 女のカラコンと2人の笑顔と明らかに意識が正常ではなさそうなのにずっと立ってられることの怖さ、なによりその男女間での余裕の違いみたいなものが、物凄くグロテスクに思えてその印象が頭から離れない

自分の文章の冗長さと稚拙さが最近とても気になる

そして最近友達と話しても話したいところまで辿り着かない 会話の形式を変えないとずっとこうなのかもしれないと思った 色んな人の会話を聞いてみたい

『バービー』2023 グレタ・ガーヴィグ

桜木町の駅前の商業ビルに入ってるブルク13という映画館でおんべと見た。 ピンクの服を着ている人が結構いて、そういうやつがあることをすっかり忘れてたので参加できず残念だった。ピンクの服持ってないけど。ピンクの服でおしゃれしているみんなが本当に本当に可愛くて、映画館がそういう場所になってることが最高で涙出た。

一貫して定番バービーが勇気がある人だったり強い人みたいに描写されることが全くないところが良かった 世界に"裂け目"が入ってしまうことは何かがおかしいと気づいてしまうことであり、気づいてしまった人がもっと良い選択を掴み取っていくためには、必要なのはヒロイックな勇気や強さなんかではなく、気づいたことについて他の人と話すこと、解決方法を聞いてみること、話し合うこと、協力し合うこと、それだけで良いということ

バービーはバービー、ケンはケン、みたいなオチはゴダールの映画に執拗に出てきてたやつのような それは実存的危機から生を肯定する唯一のルートみたいにも感じられるしそうするしかないみたいな落とし方だと思った ラストケンが泣くあたり、カット割りとか動線変すぎて混乱した 今思えばあれは唯一ベッドで行われた会話だったから、わざと変だったのかもしれない 

ケン同士が強さを競い合うために最後戦争して、その隙にバービー達が憲法を元に戻す。その前のライアン・ゴズリングとシム・リウのミュージカルシーンが良かった。そういう側面が素敵な物を生み出す瞬間も当然あるということ 

追記:このシーンは『雨に唄えば』のパロディらしい。元は男女ペアのダンスをここでケン同士が踊ること、それが良いものであること 

『バービー』では戦争(っていうか喧嘩だが)はケン同士の強さ比べのために起きた。『君たちはどう生きるか』ではまるで人間の悪意に善意が勝てずに原爆投下が起こった、みたいな描かれ方をした。

映画終盤無事バービー社会に戻った後のケン「俺も大統領になりたい」、大統領バービー「そうだね、いつかきっとなれるよ、でも最初はいちばん下のポストからね。」ナレーション「いつかきっと、ケンたちにも輝く日が来るでしょう」...

バービーが現実世界に来てビーチでローラースケートしている時「なんかおかしい。ものすごく居心地が悪い。」と感じるところで泣きそうになる。やっぱりおかしいよね?ものすごく居心地が悪いんだよ。

グレタ・ガーヴィグの映画は前の2作含めて全部やぶれかぶれで走りながら最後まで辿り着く感じなんだけど、今作がワーストだったと思う。ショットは全く決まらないし、素敵なカット繋ぎなんてものが実現する感じの気配もなく、最初の2001年〜パロディのところからずっとペラペラの感じなので、こんな映像が大きなスクリーンで流れていても良いのだろうか!?みたいな気持ちにもなった。音楽の使い方も何をどうやったらこうなってしまうんだとびっくりするほど稚拙で全部良くなかった。(エンドロールの黒バックで流れるビリー・アイリッシュの曲だけはめっちゃ良い)でもこの映画のそういう部分に関しては度外視して良いほど存在していることが助かる映画だと思うので、企画を出してくれたマーゴット・ロビーとここまでやり切ってくれた監督に本当に感謝

この映画を上記の理由で無意味だと駄作だと切り捨てることはとても簡単だと思う。でもそれを出来ること自体があまりにも特権的なことではないか グレタ・ガーヴィグのこの現象はなんか物凄い不思議、どういうことなのかわからない。状況はBTSに似ている とにかく私たちにとっては生きることに関わる大切なものであって、それを評価せずに生きていける人からの評価なんて別にいらないということ、そもそも映画批評の歴史は男性映画批評の歴史ではなかったか?と考えた時に。

マーゴット・ロビーの顔もっとずっと綺麗に撮影することはできたはず、それにしたって暗すぎないか?と思うんだけど、それはもしかしたら鬱バービーの時だったのかもしれないし、意図的なのかもしれない。或いはもはや美しさを撮影で演出するみたいなことへのアンチテーゼなのかもしれない。

ほとんどのアメリカンジョークが理解できなかったのでほとんど笑ってない アメリカンジョークを解する人が多い劇場で見たらもっと楽しかったと思う!

この間読んだWeyes Bloodインタビューの中の下に引用した部分がとても心に残っていて、"この地獄のような場所で何か意味を探す"という感じが、グレタ・ガーヴィグの映画にはあると思う 

ミレニアル世代の私たちは今興味深い状況にいて、行き過ぎてしまった世の中においてノスタルジーをどう扱うか、その葛藤と戦っている。私はノスタルジーを意味のあるものに連れ戻したいと思っている。だって毎晩叫んで発狂しても、私たちの世代に連帯感をもたらすことはできないんだとわかったから。だから、この地獄のような場所で何か意味を探すために、私たちの世代は曲を作っていると思う。

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/39806/2/1/1