230603

 

 

ロング・グッドバイ』1973 ロバート・アルトマン

素晴らしい、楽しい映画だった 画面の縦横比を心得てる映画 ガラス?プラスチック?で擦ってもマッチに火がつくのに驚いた

ロジャー・ウェイドの豪邸でマーロウが酒を飲まされるシーン、そこはかとない暴力の雰囲気で その前にヤクザのボスが女を殴る前の静けさをさらに拡張したものだと思われて身構えるからものすごくワクワクするのにその時には何も起こらず その後のパーティーのシーンでも異様な緊張感の中で結果としては酒瓶が割れるだけで その二つが映画を通してラストまで引っ張られた先にある本当に素晴らしいタイミングでの予備動作のない発砲 なんて美しいのか!北野武も緊張と緩和において本当に上品で極上と思っていたけど その点においてアルトマンよりもエンターテイメントだったのかと思った 主人公の倫理観というか生き様が北野武映画と似ていた

マーロウの家もロジャーの家もずっと逆光でそれが本当に美しい 一番ロマンチックだったのはロジャーを家に帰したときに家の外側をユラユラ歩き回るロジャーを2人が追いかける形で3人でずっと左に向かって歩いた後に、ロジャーがソファに倒れ込んで、その後すぐマーロウとアイリーンが右に引き返して歩きながら話すところ アイリーンがチキンの中にバターが入ってる料理(?)をふるまってるところも過度にロマンチック ワイングラスに注いだビール 良い その後人が溺れて死ぬのも美しい、荒波の中で2人がロジャーを助けようとするシーンは少しだけ失敗している気もしたけど、良かった 

ガラスの内側で別れ話をしているときに波とマーロウが反射で映り込むところは、そういうカットを撮ることへの心意気みたいなものは、とても親しみ深いものだったと思う

アイリーンの車を追いかけるところも、道ですれ違うところも良い 好きな人の友達ってなんか、顔褒めたり美味しいもの食べさせてあげたくなるけど最終的に無視はするよね という

『推しの子』辛すぎて泣きそうになりながら見たんだけど、あれは親兼推しを殺された人が復讐しようとする話で、そういう客観的な正しさでしか何かを殺してはならないっていう価値観が、すでにフィクションの中の殺しを殺していて、苦しい