20190901

 

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』2019 クエンティン・タランティーノ

前日夜に劇場をさがしたらどこもだいたい満席ちかくてびっくりした。結局しほちゃんとららぽーとTOKYO BAYでみた。一番好きなショッピングモール。いつものようになんの前情報もなく、予告も見ずに行ったので、シャロン・テート殺害事件についても全く知らないまま観た。その他のハリウッドにまつわるネタとか、タランティーノ作品へのオマージュとかだいたいわかんなかったと思う。『ローズマリーの赤ちゃん』も観たことないし…  『大脱走』のところとか面白いらしいけど一切わからなかった… 不勉強…

始まった瞬間からもうすでに最高の気持ちになって、ワクワクがとまらないし、音楽最高だしで、前半はもうありがとうありがとうありがとうありがとうって感じだった。ブラッド・ピットレオナルド・ディカプリオになんの思い入れもないけど、2人が立ってるだけでもうよかったし、並んで話してるだけでよかったし、ディカプリオがメソメソ泣いてるのをブラピが励ますところとかとんでもなくよかった。あの立ち姿の不自然さ、2人がカメラの方に体を向けながら話してる不自然さが、これ映画の最高なところだなと思った。タランティーノのセリフは本当に全部面白い。訳されてるのに笑えないことがない。改めて言うのも変なのかもしれないけどコメディの才能ありすぎてヤバい。とにかくリック・ダルトンのキャラがかわいすぎて、すぐ泣くとことか子役との会話とかセリフ飛んで自分にブチ切れてるところとかずっと最高。最高のシーンばかりなので全部言ってるときりがない。編集のキレもハンパじゃなくて身体能力が高すぎる。運転席と助手席に座る2人を後部座席から撮るショットがたくさん出てきて、それが本当に最高で、胸が震えた。シャロン・テート役のマーゴット・ロビーの脚の美しさもすごかった。

ラストの展開は、無知が大切なものを殺すみたいな様子にしか見えなくて、4人が計画を実行する前に車の中でしてる会話は日常的によくテレビやツイッターや街の飲み屋で盗み聞きする隣の会話でよく出会うような切ないやつだった。「私たちに殺人を教えたテレビ・スターを殺そうよ」なんて、「マンガは教育に悪い」と同じで、想像力ゼロの悲しい考え方だと思った。正義感はあって、ピュアだから余計悲しいと思った。だからそれをボコボコにする様子は痛快ではあるんだけど、やっぱりお互いに悲しいから、ブラピも刺されて傷を負うっていうのは当然の成り行きだと思う。あのヒッピーたちの悲しさは自分と無関係とは思えなかった。

始まった瞬間にこれが映画だと思って、こんな映画はもうなくなるのかもしれないと思うと悲しくて、いたたまれなくなった。あのヒッピーたちみたいな人が多すぎて、なんとなく過ごしていたら心無いものばかり目に入って心がなくなって、こんなの繰り返していたら本当にプラスチックになってしまう。やっぱりこんな風に過ごしているのは心の健康に悪いから、最後にリックに話しかけた隣の家の人みたいに、火炎放射器がなんの映画の引用かってすぐにわかってあげられるためにも、もっと良心的なものを自分で見ていかないとダメだ、と思った。